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講演内容 ]
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国際標準化作業における産学連携の仕組と課題
淺谷耕一 (工学院大学教授) |
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[プロフィール]
1974年
京都大学大学院博士課程了。同年NTT電気通信研究所入所。FTTH、ブロードバンドネットワーク、IPネットワーク、サービス品質の研究に従事。1997年
工学院大学教授。1999年 早稲田大学大学院客員教授。1988年-2000年ITU-T SG13副議長、同WP議長、2006年より次世代IPネットワーク推進フォーラム研究開発・標準化部会長、電子情報通信学会フェロー、IEEE
Fellow。工学博士。総務大臣情報通信技術賞受賞。主要著書:「Introduction to ATM Networks and
B-ISDN」(John Wiley, NY)、「情報通信と標準化」、「情報通信ネットワークの基礎と応用 -ICTの基本からQoS,
IP電話, NGNまで-」 |
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[講演内容要約]
【標準化作業におけるプレーヤの変遷】
近年、国際標準化の世界ではプレーヤの変化が起きています。例えばATMでは従来テレコムが中心に活動をしておりましたが、2000年頃からコンピュータ ― ベンダ等の様々な事業者が参入してきています。通信と情報との交流が国際標準化の世界でも始まっており、インターネットにおいて、それまでテレコムとは関係がないと思われていた事業者がITUで活動をしています。
現在は、ATMを取り巻く環境が変化しており、IPネットワークとNGN、IPテレビ等のインターネットとの相互接続あるいは次世代インターネットとの協調が非常に重要な課題になっています。同時にITU内でも従来の様に有線関係はITU-T、無線はITU-Rというような棲み分けもなくなってきており、デジタルコンバージェンスが全てのプレーヤにおいて起きていると言うことができるでしょう。
通信事業者が電電公社と国際電電の二つの独占事業であった頃は、信頼性の高い安定した通信市場がありましが、87年の民営化や放送と通信の融合により標準値に非常にばらつきがでてきています。ITUの勧告は現実的な国際的な環境ですが、それ業界のデファクト標準の大きな動きに巻き込まれるようになりました。標準化といっても例えば電波のように規制するしかない分野はITUの中でも国を中心に、一方マルチメディアやNGN等の新技術に関する分野は規制にはなじまないとして、企業を中心としたセクターメンバによって議論がされています。また、IT技術においても、ICTという新しい技術が出現しており、ちょうど経済のグローバル化というように国際という意味そのものが相当変化しているということがあります。
【今後の課題】
近年産業界は従来の利益中心の立場から、持てる者の義務として世界のための技術の利用ということを考えることができるようになってきています。ITUの地球環境に関する意識は産業界よりも高く、大学や研究機関へのアプローチが盛んに行われています。
国ごとの参加状況は、従来はアメリカ・欧州・日本の3極構造でしたが、今年の1月に行われたある標準化会議では出席者の80%をアジアの国が、また全体60%をアジア3カ国が占めました。米国ではこの2、3年でICTの標準化分野に携わる人材が減少し問題になっていますが、欧州ではEUを中心に熱心に議論が行われています。これからの標準化活動は従来のようなばらばらなものではなく、アメリカ・欧州そして日本を含めたアジアという新しい三極構造と捉えながら、中国・韓国など主要なアジアの国と一緒に取り組んでいく必要があると思われます。
また連携ということについても、従来は産官学の三者というよりは主に二者間で行われてきました。アライアンスは主に産業界の中、学会はどちらかというとアカデミアと産業界、研究開発プロジェクトは産官学、標準化は産と官というのが主な枠組みでしたが、新しいパラダイムの中では、人材育成を含めたアライアンスは産官学三者の枠組みの中で行っていく必要があるでしょう。このような動向をふまえ、日本としての新しいスタンス、あるいは産学連携の在り方を考慮していく必要があると思います。
以上
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