大崎徹哉(おおさきてつや)
特定非営利活動法人 学校マルチメディアネットワーク支援センター 専務理事。
早稲田大学文学部演劇専攻卒業。アイワ株式会社、WOWOW、財団法人放送音楽文化振興会 専務理事を経て、現職。ハイビジョン番組、放送にプロデューサーとして関わってきた。
2001年に現在のNPO法人を設立し、「音楽」、「映画」、「アニメ」の全国大会を主催するなど、全国の高校生のクリエイティブ活動を支援する活動を推進している。
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富永 私もここに原点があると思います。大袈裟に言えば、現在の中学や高校は、特定の科目に関しては先生の総入れ替えが必要だと思いますね。だけどそう簡単に入れ替えるわけにはいきませんから、先生の派遣という方法が出てきますね。産業界で能力のある人に協力してもらって、高校の先生を認定して派遣する仕事をやればいいんですよ。高校の授業は、都道府県の教育委員会が発行する教員免状がないと教えられないことになっているけど、実は臨時教員はそうではないんです。だから、臨時教員の許可やプロセスをもう少しなんとかすれば、誰でも高校で教えられるようになる。実際に情報か何かの科目ではこういうことが行われています。
だけど、あまり誰でも先生になれるとなるとおかしくなるから、きちんと先生を教育するスキル作りの仕掛けが必要ですね。
西 高校の教員免状は、教育心理学など教育に関する教職課程を取ってないと取れないけれど、大学の教員にはこれが要求されないから、教育をする上で最低限理解しているべきことがわかっていない人もいる。教職課程に代わるようなケアができるとすれば、うまくいくと思うんですよね。
村川 私も、先生方が本当にごっそり変わる時代を待たないといけないと痛感しています。例えば、「こういう仕掛けを作っていけばもっと資質を向上できますよ」と先生方に言っても、「それをやっても、お給料は上がらないんですよね」という反応です。修士を取っても、英語が上手になっても何にもならない。受験対策は塾でやれば良い。そんな気持ちでいる方が非常に大勢いらっしゃるので、学校の英語教育環境は実力の無い先生方が多いのが現状です。
富永 情報の授業でも同じです。コンピュータの設計をしたことのない人が、コンピュータのアーキテクチャの教育をしたりということが行われていますし、学生もそれが平気になってしまう。
西 大学のお客さんは誰なのかということ考えたとき、学生がお客さんだとかいう大学もありますけど、私はこれは違うと思います。大学のお客さんは社会や産業であると思う。社会や産業にとって必要な人材を育てて供給するのが大学の役割です。ダーウィンの言葉で、「適者生存の法則(Survival
of the fittest)」というのがあります。生き残る種というのは多い種でも強い種でもなくて、環境の変化に対応することができた種である、という法則です。アメリカの工学系大学で生き残っているMITやスタンフォードは、産業界や企業と連携して、そのニーズに応える教育を続けてきた。お客さんのご意向を聞いてカリキュラムを変えていけるメカニズムを持つ大学だけが生き残れるんです。クローズド・ループのメカニズムでは、大学はいずれ象牙の塔になってしまうのではないでしょうか。
富永 日本の大学教育は肩書き主義ですよね。大学がお稽古事みたいに、結婚式で仲人さんが紹介する為の学歴をつける教育をする場になっているから、学生お客さんという考え方がでてくる。学生にしても、単位をもらったというお免状をもらえば就職できるから、会社に入ってからちゃんと勉強しますという考えになってしまう。そういう考えが大学教育の1つの価値観になっていることは、エンジニアリングの世界で大変な衰退の原因になっています。一応の卒業資格ではなく、どのような能力をもっているか個別に判定をして卒業する仕組みが必要ですね。
西 社会と企業が大学を応援することは、勉強をする人達それぞれも応援することだと思います。大学院に戻れば学位が取れるといっても、会社を辞めなければいけないようでは成り立ちません。会社から求められる機密事項は守りながら、働きながら研究ができる仕組みが学校にあれば、本人にも企業にもメリットになります。それから高校生に対して、私は現在の学校が応えられていない課題があると思います。それは、進学して、その後就職があるんですが、未来の自分と社会との関係性を見出だせないということ。自分が将来何になって、それは社会にとってどんな意味があることなのか、というイメージを掴めてないんですね。これは学校に社会が関係し、社会が応援しなければできないことです。大学生という、社会に出るまでのワンクッションの時代に、社会に出たときの自分のイメージを持ちながら勉強ができたら、すごくいいと思います。 |