富永 気候やエネルギーや大規模災害時の問題、人間の動きの状況等、人類の活動に関る様々な現象のシミュレーションに役立ちますね。地理情報も入力して分析すれば食糧問題対策にも繋がる。下手をすると防衛問題にもなりますが、世界中の都市構造の情報が集まるセンター機能を作りって各国と共有する、それをGITI
ALLIANCEでぜひ実現したいと思います。今後3年位のスパンで国内的なチームと国際的なチームの両方を作りたいと思います。太田さんに電波伝搬の視点から具体的に提案していただきたいと思っています。
太田 是非進めていきたいと思います。また、無線通信の国際標準化の場は、提案の戦場ですが、数日を掛けて比較討議をしますから、一旦不利となっても翌日までに改良をして再提案をすることで形勢を逆転できます。その際に必要となることは、提案方式が通信速度や通信品質などを、劣悪な伝搬環境化でどこまで改善できたかのシミュレーションです。資本力のある企業はスーパーコンピュータを駆使して対応してきます。わが国での国際標準化の担い手は、今後、企業から大学研究機関へ移ると考えられています。その担い手となるためにも、是非ともスーパーコンピュータは必要と考えます。
西 都市空間シミュレータはGoogleとうまく連動したらいいかもしれませんね。海底ケーブルのネットワークだとか、発電された電気がどんな送電線でどんな風に分岐しデグレードしながら届くかとか、地理情報の上にそういう色々なものが何層にも見えるシステムになったら大変ありがたい。未来をシミュレーションできるカーナビみたいな感じでしょうか。パソコンがインターネットと繋がって大ブレイクしたように、こんなシステムがインターネットと繋がったら絶対に面白いと思います。
富永 そう、2040年の未来の世界を今見たいんです(笑)。だから2040年に向かって、見えるようにしましょうよ。来年か再来年か、5年後くらいになるかも知れないけれど、30年後の世界が見られるような技術と学問を創造していきましょう。
富永 村川先生のご専門は英語と音声学ですね。
村川 テキサス大学で外国語教育を専攻しました。アメリカに12年間いた中で、日本人の英語に関するいろいろな「まずさ」を実感し、何とか良い方法がないかと思っておりました。まずTOEFLですが、当時、中国や韓国の留学生のTOEFLのスコアはすごく高いのに、日本人ではペーパーテストで600を出す日本人なんていませんでした。何故そんなに高い点数が取れるのかと思って聞いてみると、その頃、皆とても分厚いTOEFLのテキストで勉強していた。TOEFLやTOEICの点数が高いからといって英語がペラペラとは限らないとおっしゃる外国の先生もいらっしゃいますが、私は基礎学力を見るテストとしては結局一番良いと思うので、日本人のための試験対策の必要性を感じて色々と出版してきました。
最初は旺文社から「アップルシリーズ」というのを出して、日本では初めてのTOEFLの試験対策本でかなり有名になりました。そのうちに、本ではどうしても情報量が非常に制限がある。より情報量の多いコンピュータで勉強できる方法がないかと考えていたとき西さんにお会いし、アスキーでCD-ROM教材を開発していただきました。CD-ROMは、例えば問題の解説文を読んでいてさらに解らない言葉が出てきても、その言葉の解説にハイパーリンクですぐに飛ぶということができます。これは本ではできない仕掛けですね。
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太田現一郎(おおたげんいちろう)
早稲田大学国際情報通信研究センター客員教授。工学博士。
1968年早稲田大学理工学部電気通信学科卒後、松下通信工業にて広帯域電子計測機器の開発設計、第3世代携帯電話と無線LAN及び無線アクセス(後のWiMAX)研究開発及び国際標準化に従事。2003年早稲田大学国際情報通信研究科修了。現在、株式会社横須賀テレコムリサーチパーク国際ICT技術戦略研究所事業企画室次長YRP研究開発推進協会新規事業部担当部長を兼務。平成20年度の総務省ユビキタス特区の選定を獲得し、日本国初のGSMコアネットワークテストベッドをYRP内に構築、海外3GPP市場に対応する携帯端末の相互運用試験(NVIOT/NOIOT)の運用を開始。
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